本巡るノラネコ団集会後記
2021年3月19日(金)に本巡るノラネコ団集会の第1回が開催されました。
今回登壇いただいた株式会社アフリカドッグス代表の中須俊治さんに対談後の感想を交えた後記を執筆いただきました。
本巡るノラネコ団集会#01:ハジメちゃん対談後記
「SDGs好きのサラリーマンへ」
2021年3月19日(金)、四条烏丸にある「学び場とびら」で鍼灸師のハジメちゃんと対談をしてきた。かたちだけSDGsとかエシカルとかサスティナブルとか言ってる人たちは、耳をかっぽじって、ハジメちゃんの話を聞いたほうがいい。これからを生きるヒントが散りばめられている。
ハジメちゃんは鍼灸師だ。しかし、鍼をしたり、お灸をすえることが本質的な仕事ではない。「場合によっては、大変だったねって、肩をポンポンと叩くだけでいいかもしれない」と、ハジメちゃんは言う。鍼や灸をつかうのは、あくまで手段であり、その人をどうしたら癒せるのか、心の状態をハッピーにできるかを追求するのが鍼灸師の仕事らしい。深すぎる。
世の中を今よりも豊かに、生きやすくしようと、いろんな人はがんばっている。そのために、問題になっていることを見極めて、ああでもないこうでもないと奮闘している。しかしそのとき、多くの人は手段にこだわってしまう。「SDGsの何番目のゴールにコミットしているか」「エシカル消費を推進しよう」「事業をサスティナブルに」・・・。一見、これは正しいように見える。
しかし、ほんとうに大切なのは、だれかを慮ることであり、「あいつ元気でやっているかな」と心を寄せることであったりする。にもかかわらず、手段に囚われすぎて、別の問題を引き起こすことは、思いのほかよくある。たとえば、SDGsの「貧困をなくそう」にコミットしそうな活動をしていたとしても、地域内でパワーバランスが崩れたり、よかれと思って施したことが、かえって現地の文化や産業を衰退させていることは、ぼくがフィールドにしているアフリカ地域では散見される。
本当の意味で、エシカルに、サスティナブルに、SDGsにコミットするなら、まずは目の前の人にちゃんと向き合うことが必要だと思う。とはいえ、それは容易なことではない。ときに、とてもツラい感情を伴う。それを地道に続けてきたハジメちゃんの語り口に、ぼくは目に見えないものを見るスタンスを感じた。すなわち、ぼくらが見落としがちなものを汲みとろうとする姿勢である。
目に見えないものを見ようとすれば、おそらく人は、優しくないといけないし、想像力をはたらかさないといけない。それは鍼灸師にとってだけでなく、いろんなジャンルの人にとって、求められることだ。表層的にあらわれたものではなく、なにが原因でそれが出てきたのか。その動きにフォーカスしなければ、リアルな世界は見えてこない。見えているものは事実かもしれないが、見えないものにこそ、真実は宿る。
SDGsを自分事として捉えるとき、示唆を与えてくれるのが鍼灸師の仕事だと、ぼくは思う。鍼灸を裏づける東洋医学・東洋思想の在り方は、2000年以上にわたって経済性と社会性を両立させてきた。相反するそれぞれの性質を、いい感じに、バランスよく整えてきた。その系譜に触れて、世の中を今よりも愉快で優しくしていくプレイヤーとして、また一歩を踏み出したい気持ちになった。ハジメちゃんとの対談で、ぼくは知らないうちに、施術されていたのだ。
これからの「SDGs」の話をしよう。ようこそ鍼灸の世界へ。味わい深い、人生の入り口へ。
本巡るノラネコ団集会のダイジェスト
株式会社アフリカドックス中須俊治さんと鍼灸メリディアン烏丸中根一さんの対談動画をダイジェストでYouTubeにて配信中です。近江商人の三方よしを現代にどう活かすか??是非ご覧ください。
出演者紹介
中須俊治
京都生まれ。滋賀大学経済学部卒業。
株式会社AFURIKA DOGS代表取締役社長。重彩プロデューサー。「みんなが笑って過ごせる世界をつくる」ために日本とトーゴ共和国を往復し、エウェ族と京都の職人の染色技術を重ねて、商品開発している。大学在学中に単身アフリカへ渡航し、ラジオ局のジャーナリストとして番組制作に携わる。大卒後、京都信用金庫に入社。嵐山地域で営業を担当した後、独立・起業。モットーは他力本願、2児の父親。
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中根一
伝統文化が息づく京都、四条烏丸にて鍼灸院『鍼灸Meridian烏丸』を開院。「医(治する・療ずる)」ではなく「醫(治する・癒える)」を念頭に、病気の治療から体質に合った養生まで、ライフスタイルのデザインに従事。持続可能な医療として、日本の民俗知である日本鍼灸を多くの方々に再認識して頂きたく、執筆活動も少々。 古くて新しい東洋医学に、ぜひ触れてみてください。明治国際医療大学客員教授
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